健康志向の高まりとともに、味噌や塩麹、甘酒といった「発酵食品」がブーム……というより、もはや食卓の定番として定着した感があります。
そんな中で 「発酵食品ソムリエ」 という資格に興味を持ち、「仕事」に繋がるのかどうかを調べている人が増えているようです。
「この資格を取れば、発酵食品の専門家として就職できるのではないか」
「今の仕事にプラスになって、給料が上がるのではないか」
そう期待してしまう気持ち、よく分かります。
とはいえ、現実はそう甘くはありません。結論から言ってしまうと、 この資格一本だけで食べていくのは極めて難しい というのが本当のところです。
「なんだ、それなら意味ないじゃん」とページを閉じようとした方、少し待ってください。
「就職の切符」にはならなくても、 「今の自分に付加価値をつける武器」 としては、十分に使える可能性があるからです。
今回は、きれいごと抜きの客観的な視点で、発酵食品ソムリエと仕事の関係について、リアルな実情をお話しします。
発酵食品ソムリエの仕事の実情
まず、多くの人が誤解している「資格と就職」の関係について、はっきりさせておく必要があります。
「発酵食品ソムリエ」を取得したからといって、明日から「ソムリエ」としてどこかの企業に採用される……なんてことは、まずありません。
専門の求人を探すのは難しい
実際に、大手求人サイトやハローワークで「発酵食品ソムリエ」というキーワードで検索をかけてみても、この資格名を職種として募集している求人は ほぼゼロ でしょう。
調理師や管理栄養士のような「業務独占資格（その資格がないとできない仕事）」や「必置資格（店に一人置かなければならない資格）」とは、根本的に性質が異なるからです。
あくまで民間資格であり、言ってみれば 「私は発酵食品についてこれだけ勉強しました」という証明書 に過ぎないのです。
企業側からすれば、「資格を持っている人」が欲しいのではなく、「調理ができる人」や「商品開発ができる人」が欲しいわけで、そのプラスアルファとして知識があるなら歓迎する、というスタンスが一般的でしょう。
「意味ない」と言われる理由
ネット上で検索すると「発酵食品ソムリエ 意味ない」といったネガティブなワードが出てくるのは、こうした 「即戦力の就職パスポートではない」 という現実があるからです。
高いお金を払って講座を受け、試験に合格したのに、就職先が斡旋されるわけでもない。
資格手当がいきなりつくわけでもない。
過度な期待を持って取得した人ほど、「なんだ、とっても生活が変わらないじゃないか」とがっかりしてしまう……というわけです。
仕事に直結させるのは自分次第
とはいえ、全く無意味かといえば、決してそんなことはありません。
この資格は、持っているだけで何かが起きる「魔法の杖」ではなく、 自分で振り回して使う「道具」 だと考えてください。
すでに飲食業界にいる人がメニュー開発に活かす、あるいは美容業界の人がインナーケアのアドバイスに取り入れる。
このように、 「既存のスキル × 発酵の知識」 という掛け算ができたとき、初めてこの資格は「仕事」として機能し始めます。
使い手次第で、ただの紙切れにもなれば、強力な差別化ツールにもなるのです。
資格を活かして働く方法
では、具体的にどうやってこの「道具」を仕事に活かしていけばいいのでしょうか。
現実的なラインで、いくつかのパターンが見えてきます。
履歴書で差別化を図れるか
就職や転職の際、履歴書の資格欄に「発酵食品ソムリエ」と書くことは、 間違いなくプラスのアピール になります。
特に、以下のような業界では目が留まるはずです。
- オーガニックカフェや健康志向の飲食店
- 食品メーカー（特に商品企画や販売）
- 味噌や醤油などの醸造メーカー
- 美容・エステ関連の企業
面接官に対し、「食と健康に対して高い意識があり、体系的に学ぶ意欲がある人材だ」という印象を与えることができるからです。
ただし、あくまで「プラス評価」であって、採用の決定打ではありません。
「実務経験＋資格」 となれば、鬼に金棒でしょう。
年収や待遇は変わるのか
サラリーマンとして企業に勤める場合、この資格を取っただけで基本給が上がる、といった甘い話は、残念ながらほとんど聞きません。
企業によっては、自己啓発の一環として受験料の補助が出たり、数千円程度の資格手当がついたりする可能性はゼロではありませんが、レアケースでしょう。
待遇アップを狙うなら、資格そのものの評価というより、資格で得た知識を使って 「売れる新商品を開発した」「顧客への提案力が上がり売上が伸びた」 といった実績を作る必要があります。
結果を出したときの「裏付け」として資格が効いてくる、というイメージです。
副業や自身の教室で活用する
実は、発酵食品ソムリエが最も輝くのは、 組織に属さない働き方 をする時かもしれません。
たとえば、自宅で「味噌づくりワークショップ」や「塩麹料理教室」を開く場合。
ただの「料理好きの主婦」が教えるのと、「発酵食品ソムリエ」の肩書きを持つ人が教えるのとでは、集客における 信頼感（と、設定できる参加費） がまるで違ってきます。
また、Webライターとして活動する場合も同様です。
「健康・美容・食」はWeb記事の中でも単価が高いジャンルですが、専門性が求められます。
プロフィールに資格を明記することで、記事の監修や執筆依頼を受けやすくなり、文字単価アップの交渉材料にもなるのです。
会社に依存せず、 自分の名前で小商いをするための「権威付け」 として使うのが、最も賢い活用法と言えるかもしれません。
忙しい人のための取得ルート
「仕事に活かせるかもしれないなら、取っておこうかな」と思ったものの、忙しい社会人が学校に通うのは現実的ではありません。
基本的には通信講座を利用することになりますが、そのあたりも少し触れておきましょう。
独学は無理でも難易度は低め
まず、発酵食品ソムリエは「ユーキャン」などの指定講座を受講し、試験を受けることで取得できる資格です。
書店で本を買ってきて独学で勉強し、いきなり試験だけ受ける……ということはできません。
「講座を受ける」というプロセスが必須なわけです。
しかし、 難易度自体は決して高くありません。
自宅で受験できるケースが多く、テキストをしっかり読み込めば合格できるレベルに設定されています。
仕事をしながらでも、隙間時間の勉強で十分に取得可能です。
ユーキャンなどで学ぶコスト
気になるコストですが、数万円単位の受講料がかかります。
これを「高い」と見るか「投資」と見るかは、先ほどお話しした 「取得後の活用イメージ」 があるかどうかで決まります。
単に知識を増やすだけの趣味としてなら、少し高い出費かもしれません。
しかし、それをきっかけに料理教室を開いたり、ブログで発信して収益を得たりするつもりなら、十分に回収できる金額でしょう。
結局のところ、発酵食品ソムリエを「仕事」にできる人は、資格を取った後に 「どう動くか」 までセットで考えている人なのです。
資格取得はゴールではなく、あくまでスタートライン。
そこからどう自分なりの「発酵ライフ」を仕事に組み込んでいくか、まずはそこを妄想することから始めてみてはいかがでしょうか。