近年、発達障がいやグレーゾーンの子どもが増加傾向にあり、専門的な支援を行える人材のニーズが高まっています。そんな中で注目を集めているのが「子ども発達障がい支援実務士」という資格です。
この資格を取得すると、具体的にどのような職場で働けるのでしょうか。また、日々の業務内容はどのようなものなのでしょうか。
本記事では、子ども発達障がい支援実務士の活躍の場と実際の業務について、詳しく解説していきます。
実務士の職場と業務
子ども発達障がい支援実務士は、さまざまな現場で活躍できる資格です。主な職場としては、児童発達支援事業所、放課後等デイサービス、保育園・幼稚園、小学校などが挙げられます。
それぞれの現場で求められる役割や業務内容を見ていきましょう。
児童発達支援での役割
児童発達支援事業所では、0歳から6歳までの未就学児を対象とした療育を行います。子ども発達障がい支援実務士は、ここで重要な役割を担います。
具体的な業務内容は以下の通りです。
- 個別支援計画に基づいた療育プログラムの実施
- 遊びを通じた発達支援(言語、運動、社会性の向上)
- 日常生活スキルの獲得支援
- 保護者への指導・相談対応
児童発達支援では、一人ひとりの特性に応じたオーダーメイドの支援が重要となります。そのため、発達障がいに関する幅広い知識と実践的なスキルが求められるのです。
放課後等デイサービスでの業務
放課後等デイサービスは、小学生から高校生までの障がい児を対象とした施設です。学校終了後や休日に利用され、「障がい児版の学童保育」とも呼ばれています。
ここでの主な業務は次のようなものです。
- 学習支援(宿題のサポート、個別学習指導)
- ソーシャルスキルトレーニング
- 集団活動での適応支援
- 日常生活動作の練習
放課後等デイサービスでは、学校生活で抱える困りごとの解決に重点が置かれます。友達との関わり方や集団でのルール理解など、社会性の発達を促す支援が中心となります。
保育園・幼稚園での活用法
一般的な保育園や幼稚園でも、発達障がいやグレーゾーンの子どもは在籍しています。そうした現場で、子ども発達障がい支援実務士の知識が活かされます。
保育園・幼稚園での具体的な活用場面は以下の通りです。
| 場面 | 具体的な支援内容 | 
|---|---|
| 集団活動 | 視覚的支援ツールの活用、環境調整 | 
| 個別対応 | 特性に応じた声かけ、行動支援 | 
| 保護者対応 | 家庭での関わり方のアドバイス | 
| 職員連携 | 支援方法の共有、研修の実施 | 
既に保育士や幼稚園教諭として働いている方が、この資格を追加で取得するケースも多く見られます。専門知識を身につけることで、より質の高い保育を提供できるようになります。
小学校での支援業務
小学校の特別支援学級や通常学級でも、子ども発達障がい支援実務士の知識が重宝されます。教育現場では、個別の配慮が必要な児童への対応が課題となっているためです。
小学校での主な支援内容は次の通りです。
- 個別の教育支援計画の作成サポート
- 授業中の学習支援(集中力維持、理解促進)
- 休み時間の見守りと社会性育成
- 教員への助言・連携
教員免許を持つ方が、さらに専門性を高めるために取得するケースも増えています。発達障がい支援の知識があることで、クラス全体の指導にも活かすことができます。
他の支援資格との違い
子ども発達障がい支援に関連する資格は複数あります。それぞれの違いを理解することで、自分に最適な資格を選択できるでしょう。
アドバイザー資格との差
同じユーキャンが提供する「子ども発達障がい支援アドバイザー」との違いは何でしょうか。
最も大きな違いは、対象とする場面です。アドバイザー資格は主に家庭での支援に特化しているのに対し、実務士資格は職場での業務を想定した内容となっています。
具体的な違いは以下の通りです。
| 項目 | アドバイザー | 実務士 | 
|---|---|---|
| 主な対象 | 保護者・家庭 | 支援者・職場 | 
| 学習内容 | 家庭での関わり方 | 現場での実践スキル | 
| 事例 | 日常生活場面 | 集団支援場面 | 
| 目指す人 | 我が子への理解を深めたい親 | 仕事で支援を行いたい人 | 
既に支援の現場で働いている方や、これから専門職として就職を目指す方には、実務士資格の方が適しているといえるでしょう。
児童発達支援管理責任者との関係
児童発達支援管理責任者(児発管)は、国が定める配置義務のある重要なポジションです。個別支援計画の作成や事業所全体の管理を担当します。
児発管になるためには、数年間の実務経験と専門研修の受講が必要です。一方、子ども発達障がい支援実務士は、実務経験がなくても取得可能な資格です。
実務士資格は、将来的に児発管を目指すための基礎知識として位置づけることもできます。まずは実務士として現場経験を積み、その後児発管へとステップアップする道筋も考えられるでしょう。
保育士資格との併用メリット
保育士資格を既に持っている方が、子ども発達障がい支援実務士を追加取得するメリットは大きいものがあります。
併用によって得られる主なメリットは以下の通りです。
- 発達障がい児への専門的対応力の向上
- 保護者からの相談対応スキルの強化
- 職場での指導的立場への昇進可能性
- 転職時の差別化ポイント
保育の基本スキルに加えて発達支援の専門知識を持つことで、より幅広い子どもたちに適切な支援を提供できるようになります。
就職と収入の実情
資格取得後の就職状況や収入面について、現実的な情報をお伝えします。
求人が多い職場
発達障がい支援の分野は、人材不足が深刻な業界です。そのため、求人数は豊富にあるのが現状です。
特に求人が多いのは以下の職場です。
- 放課後等デイサービス – 事業所数の急激な増加により、最も求人が多い
- 児童発達支援事業所 – 早期療育のニーズ拡大で需要増
- 保育園・幼稚園 – インクルーシブ教育の推進で専門人材が求められる
- 特別支援学校 – 教育現場でのサポート人材として
厚生労働省の統計によると、放課後等デイサービスの事業所数は年々増加傾向にあり、それに伴って職員の需要も高まっています。
給与水準の目安
子ども発達障がい支援実務士資格者の給与は、職場や経験年数によって大きく異なります。
一般的な給与水準は以下の通りです。
| 職場 | 月給目安 | 年収目安 | 
|---|---|---|
| 放課後等デイサービス | 18~25万円 | 250~350万円 | 
| 児童発達支援事業所 | 20~28万円 | 280~380万円 | 
| 保育園(加配職員) | 16~22万円 | 220~300万円 | 
| 特別支援学校(支援員) | 15~20万円 | 200~280万円 | 
他の資格との組み合わせや管理職への昇進により、さらなる給与アップも期待できます。また、経験を積んで独立開業する道もあります。
未経験からの転職可能性
子ども発達障がい支援の分野は、未経験者でも転職しやすい業界といえます。人材不足が深刻で、やる気のある人材を歓迎する職場が多いためです。
未経験から転職する際のポイントは以下の通りです。
- 資格取得による基礎知識の習得
- ボランティア活動での実践経験
- 子どもとの関わりが好きという動機の明確化
- 継続的な学習意欲のアピール
実際に、異業種から転職して活躍している方も多数います。営業職、事務職、製造業など、様々なバックグラウンドを持つ方が、この分野で新たなキャリアを築いています。
資格取得後のキャリアパス
子ども発達障がい支援実務士資格を取得した後のキャリアパスは多様です。
主なキャリアの道筋は以下の通りです。
- 現場スタッフ → 主任・リーダー → 管理者・所長
- 支援員 → 児童発達支援管理責任者 → 相談支援専門員
- 保育士 → 発達支援専門保育士 → 園長・主任
- 支援員 → 独立開業 → 事業所運営
継続的なスキルアップにより、より専門性の高いポジションや収入アップを目指すことが可能です。また、大学院で特別支援教育を学んだり、臨床心理士を目指したりと、さらなる専門性の向上を図る道もあります。
子ども発達障がい支援実務士は、発達障がい支援の現場で即戦力として活躍できる実践的な資格です。支援を必要とする子どもたちが増加する中、この分野の専門人材へのニーズは今後も高まり続けるでしょう。
自分に合った職場を見つけて、子どもたちの成長を支える意義深い仕事に携わってみてはいかがでしょうか。
